分からないことをすぐ聞ける、現場の空気
技能の仕事は、黙って見て盗めと突き放される現場も少なくない。珠喜建装の職場はそれとは色合いが違う。風通しのいい雰囲気を保ち、分からないことがあればその場で先輩へ聞ける空気をつくってきた。入ったばかりの人には、道具の握り方や材料の扱いから順を追って教えていく。間仕切りや軽鉄下地、石膏ボード貼りの手順を、現場で体に通しながら少しずつ覚えてもらう流れだ。
一人で抱え込まずに相談できる環境は、技術の習得を早める。先輩職人から直接学べる機会が多く、現場ごとに違う条件への対応も、やりとりを重ねるうちに身についていく。取材していて感じたのは、教える側と教わる側の距離が近いことだった。正直なところ、技能職の現場でここまで声を掛け合える空気は珍しいと思えた。
手がけた空間が、人に使われていく手応え
内装仕上の面白さは、自分の仕事が形として残り、大勢の人に使われていくところにある。学校の教室で生徒が机を並べ、病院の待合で患者が時間を過ごし、大型商業施設を買い物客が行き交う。その空間の壁や天井を、珠喜建装の職人が手で仕上げてきた。関西国際空港やHEP FIVEのような大きな施設に関わったとき、完成した空間を人が埋めていく光景は、ほかでは得がたい達成感になる。
ものづくりに興味がある人や、一から手に職をつけたい人にとって、この手応えは働き続ける支えになる。図面上の線が歩いて触れられる空間へ変わっていく過程を何度もくぐるうち、職人としての自信も積み上がっていく。寝屋川市高柳の拠点から近畿一円の現場へ出て、用途の違う建物を数多く踏むほど、その達成感に出会う機会も増える。
長く働き、やがて独立まで見据える
珠喜建装は、一度入った人が腰を据えて働き続けられる土台を整えてきた。正社員として社会保険を完備し、退職金制度や規定に基づく交通費の支給、希望に応じた制服の貸与まで用意している。休日は日曜のほかお盆や年末年始の長期休暇があり、暮らしとの折り合いもつけやすい。現場の状況で勤務時間が動くこともあるが、朝から夕方を基本とした働き方だ。
頑張りは日給へ素直に反映され、能力や経験に応じて給与へ返ってくる。資格取得支援で専門性を高めた先に、将来の独立という道まで見据えられる。独立を望む人には、現場で要るノウハウを隠さず渡していく。代表の河野嘉伸のもとで人が育ち、その技術が次の職人へ受け継がれていく流れが、この会社を長く動かし続けている。


